『田園の詩』NO.39 「南国の雪遊び」(1996.2.13)



 九州でも、この冬は厳しい寒さが続いています。わが家は山里なので、冷え込みは
更に強く、朝は零度以下になります。

 充分な凍結対策もしていないので、外の水道は凍りついて出ません。おまけに、夏に
涼しいように造られた隙間だらけの家は、ストーブのある部屋はなんとか暖かいものの、
他の部屋は外気と同じ位の寒さです。

 しかし、雪は数回ちらついただけで、まだ積もるほど降ってはいません。大雪に見舞わ
れて大変な苦労をしている地方の方には申し訳ありませんが、私達にとっては、たまに
積もる雪を見るのは楽しみなことなのです。

 特に子供達は大喜びをします。小三の息子などは、朝、雪が積もっていると跳び起き
て外に出ます。そして、いつも決まって小さな≪雪うさぎ≫を作って家に入ります。


      
     家の周りや、近辺の里山には南天が沢山あります。年末には、北海道の親戚に
      正月用に数十本送ります。雪さえあれば雪うさぎはすぐにできます。ただ、大人に
      なった息子は、残念ながら、もう作っていません。    (2007.1.7写)



 南天の赤い目がかわいい雪うさぎの名前も、いつも≪コンちゃん≫と決まっています。
この新しい≪コンちゃん≫を冷凍室の中に入れ、いままで入っていた古い≪コンちゃん≫
を外に逃がしてやります。

 いままでに何度入れ替わったことでしょう。息子は律儀にも喜々として彼の慣習を続け
ています。そして、時には、真夏に冷凍室の奥から≪コンちゃん≫を取り出しては嬉し
そうに眺めています。

 このまま、雪が積もらねば、今年は新しい≪コンちゃん≫に生まれ変わることができま
せん。息子にとっても、≪コンちゃん≫にとっても、悲しいことです。

 北国の人達の根雪に対する苦労は、何国に住む者にとって想像するに難いものがあ
ります。当地では、雪ははかなく消え去るものなのです。朝起きた時に、『山も野原も
綿帽子かぶり、枯木残らず花が咲く』ように積もっていることがたまにありますが、夕方
までにはほとんど解けてしまいます。

 だから、滅多にないチャンス、僅かな時間を、『犬は喜び庭駆けまわる』ように、子供
達は雪と戯れるのです。

 北国は例年にない寒波・大雪とのニュースを聞きました。心痛みます。
                              (住職・筆工)

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